美術学校の入学試験といえばデッサンだが、日本画の試験でも鉛筆か木炭が指定され、滅多に墨彩が課せられることはない。
個性的でなくても写真のように描写できれば、間違いなく高い点数が得られるだろう。
西欧の透視図法的な描写だけがデッサンではないけど、評価の基準がここに置かれることが多い。
客観的であることと透視図法が同一視されていて、観察力があれば透視図法的に見えるはずだと、多くの教員が信じている。
しかし、この見方は学習によって可能になったものだ。
それだから創始者であるルネッサンスの大画家たちは、あのように大仰な装置を使わなければ透視図法を完成させられなかったのである。




頭を切り替えないと透視図法的には見えないのだから、観察を強いるよりも観念的に描くことを提示する方が効果的ではないか。
そう考えて、卓上に静止したモチーフを並べるのでなく、天井から立方体をぶら下げてくるくる回るようにした。
実習室内に吊るされた様々な高さの立方体を参考にしながら、構成的な作品を制作するという課題を試みた。






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