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学科ニュース
テーマは「動物と観光」―ようこそ笛吹先生―
「マスコミ演習Ⅱ」で、10月に着任された笛吹(うすい)理絵先生にインタビューをした。アメリカの大学で人類学、生態学および霊長類学を、広島大学で観光地理学を学び、動物と観光の関わりに関心があるという。
―どのような研究をされているのですか?
もともと動物に興味がありました。修士課程の時、サルを見せる観光地で研究を行ったことがきっかけで、動物の観光利用について研究するようになりました。これまで主に宮島のシカや大久野島のウサギを事例に、日本での観光と動物の関わりを調査してきました。
動物の観光利用と保護のバランスのあり方に関心があります。例えば、宮島ではシカへの餌やりを巡って関係者の意見が対立している。大久野島では観光客を惹きつけているウサギが外来種であることから、どのように管理を行っていくかが課題となっています。

―島の研究にも関心があるのですか?
動物と観光について研究を進めていったら、たまたま調査地が(本土ではなく)島嶼部だったということです。島は人口減少や高齢化が著しいので、観光が果たす役割を研究する意義は高い。調査をした中でも屋久島は特に面白いと感じました。島外からの移住者もある程度増えたのだが、集落単位でみると、移住者が住みやすい集落とそうではない集落があり、同じ島でも集落ごとに性格が異なっていることが興味深かったです。
―なぜこの大学に?
比治山大学には観光プログラムがあり、大学院の博士課程のとき、ここで指導教員と一緒に観光学を教えたことがあるので、馴染みを感じました。私的な事情ですが、今年の2月に出産し、なるべく実家のある広島で子育てをしたいという思いもありました。
―比治山大学ではどの講義を担当されているのですか?
後期は観光学概論と観光文化論を担当します。広島大学でも観光学の授業を担当していましたが、オムニバス形式で、1学期に1回だけの担当でした。ここでは半期15回分の授業を初めて1人ですべて担当します。
―最初は人類学を学んだのですね
留学先のアメリカでは、好きな講義を受けることができました。当初は霊長類に興味がありました。人間社会と類似する点が多く、例えばボスとの上下関係とか私たちの社会を映しているようで面白い。またチンパンジーやゴリラなどは知能も高く、大学院では人間と手話でコミュニケーションできるチンパンジーがいる施設でボランティアをしたこともありました。食べたい時は口に手を当てるしぐさ、両手を自分の胸の前に組むと「仲間だから警戒しなくていい」という合図になります。

サルの赤ちゃんへの接し方を見ていると、危ない時や本当に必要な時に手助けをするが、そうでない時は特にコントロールせず、見守っている。子どもができた今、サルの研究をした経験は自分の子育ての参考にもなっています。
―霊長類学からなぜ観光学に?
霊長類学の中でも特に民族霊長類学といって、人間社会との関わりから霊長類の生態について研究する学問分野に関心がありました。修士課程では中国の安徽省にある野猿公園で2ヶ月間研究をしました。そこでサルと観光客、管理者、地元住民などの関係性を見ていくうちに、さまざまな立場の人の利害関係が複雑に絡み合っていることを実感しました。
サルやサル以外の動物を利用している観光地は、中国だけでなく、宮島や大久野島も含めて世界中にあります。フィールドは広く、視野を広げたいという思いから観光学に興味を持ちました。
―教員生活で大変だったことは何ですか。
教員になって1年目、広島大学の学生とインド、アメリカの学生を対象とした3泊4日のフィールドワークをしました。事前に送ったはずのメールが学生に届いておらず、フィールドワーク前の講義は予定を変更せざるを得ないというハプニングもありました。文化が違う上に、それぞれ大学での専門も異なる学生をまとめるのは苦戦しました。しかし、予定通りにいかない時は授業内容を切り替えるなど、臨機応変に動くことが必要だと身をもって体験しました。
(まとめ・3年石田ゼミ)