本学卒業生で、作家活動をされている益村千鶴さんに特別講義を行っていただきました。

　益村さんは短大卒業後、建築設計事務所に勤務した後、西洋の古典絵画技法を本格的に学びました。シュルレアリスムへの憧憬から、身体の一部をモチーフとして、不完全さとともにある美を切り取られた構図と低彩度の繊細な⾊調の油彩で表現し、ギャラリーを通して発表されてきました。

　講義の中で特に印象に残っているのは、「経験したことは無駄にならない」という言葉です。

　作品を展示する際には、目線の高さや採光などを細かく考えて調整すると教えていただきましたが、益村さんの展示に対する考え方には、設計事務所で図面を扱った経験が生かされているように感じます。

　また、益村さんの絵画に古典的な静謐さとモダニズムの洗練の両方を感じるのも、建築空間への関心があるからではないかと思います。

　益村さんの講義を通して、作品と展示空間は不可分の関係にあるのだと、あらためて実感しました。